上記のような不良債権処理を銀行が行った場合の影響を考えてみると、@の場合はあくまで帳簿上の会計処理に過ぎないので、直接的に何かが起こるわけではない。ただし、不良債権処理を進めることによって貸し倒れ引当金の積み増しになり、その結果赤字になりでもすると自己資本比率が下がってしまう。国際統一基準であるBIS規制の下では、自己資本比率8%を下回ってしまうと、国際業務が行えなくなるばかりか銀行の信用性も損なわれてしまう。Aの場合は、不良債権先企業の整理を進めて状態を確定させることであるため、多くの場合失業者の増加やその企業の取引先へのダメージ(場合によっては連鎖倒産)を伴う。処理する不良債権の量が少ないうちは、人も取引先も他の居場所に吸収されることが可能であるが、一時にまとめて不良債権処理が行われてしまうと吸収できる限界を超えて悪影響が次々と波及してしまう恐れがある。それにより消費が手控えられて、不振に陥る企業が増えるという結果をもたらすことになる。それでも不良債権処理を行うのは、不良債権を解消することが直接の目的ではなく、健全な企業間競争メカニズム、企業金融メカニズムの機能回復・再活性化を図ることによって長期的な景気の回復を目指すことに本当の目的があるからである。 銀行が不良債権処理を進めている状況下において、協議会は「自分たちのためにいったい何をしてくれるのか?」というのが中小企業の経営者にとって最も興味のあるところだろう。答えは簡単である。本気で再建を目指す企業が、より良い手段を見つけるためのサポートをするのが協議会の仕事だ。企業再生とはそれぞれの企業が周囲の協力を得ながら自分たちのために行うものである。その過程で専門知識が必要になったときやアドバイスが必要になったときには、協議会の出番である。協議会は「当事者にはならないが、中立の立場を保ちながら、企業や取引先金融機関、その他の関係各方面との調整役を担う」ことにより、現実に即した手段で企業再生実現のためのサポートを行う。また、協議会が調停役として間に入ることは銀行にとっても大きなメリットがあるのだ。協議会への相談の中で方針を決定した企業がまず最初にやらなければならないことは、現状の正確な把握である。その過程で金融機関との話し合いなどを経ることで、銀行としても、他行の状況も含め正確に状況を把握することができる。さらに、企業側と直接的に話をするよりも、協議会に間に入ってもらうことで問題の矢面に立つことを避け、不良債権先企業から銀行に対するマイナスの感情を和らげることができる。企業と金融機関など各方面との最適な妥協点を見つけることが協議会に求められる役割でもあり、協議会の隠れた設置理由だと言っても良いだろう。
再生支援計画の概要とその手法
協議会の対応は大きく2つの段階に分かれている。
<一次対応> まずは、各企業が同協議会に相談を持ち込むところからスタートする。その際、最良のアドバイスを受けるためにも過去3期の税務申告書(付属明細書付)や担保提供状況表、資金繰り表などの資料が必要となる。何よりも現状を正確に把握することがスピーディーかつ効果的な企業再生への第一歩なのだ。当然のことながら、風評被害に弱い中小企業に配慮して相談内容や開示された資料等は守秘義務により厳重に保護される。そして、相談を持ち込んだ企業の事業内容を調査・検討し専任のアドバイザーとの面談を経て、各種アドバイスの実施や専門家の紹介などがなされる。
<二次対応> 一次対応の段階では問題点を解決することができず、本格的な再生計画支援が必要となった場合には、二次対応に移行する。専任アドバイザーとの面談後、企業側の了承を得て取引のある金融機関に集まってもらいヒアリングを実施する。この段階までは企業側の費用負担は発生しない。その後、企業側と個別のアドバイザーチーム(協議会によって選任された弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士ほか)、メインバンクなどによる財務分析や収益計画の見直し、金融支援内容の検討が行われたのち再生計画が完成する。この段階では、企業側にもアドバイザーへの費用負担等が発生する場合もある。そして、再生計画が完成したあとはメインバンク以外の金融機関へも支援を要請、金融支援の取りまとめに入る。協議会は再生計画の策定支援、金融機関の取りまとめだけに留まらず、実際に再生計画がスタートした後も再生計画の進捗状況のフォローにも協力している。 協議会が再生支援を行う企業は以下のような状況にある場合が多い。 @現状では借入金の返済に苦しんでいるものの、営業面では利益を上げている、または今後利益を上げられる見通しである。 Aメインバンクから再生計画の策定を要請されている、または計画を提出したものの納得を得られていない。 B借入金の返済猶予を申し入れているが、了解が得られていない。 C取引銀行が複数あり、メインバンク以外の支援が得られていない。 D一部の金融機関がRCC(整理回収機構)に債権譲渡してしまった。 協議会関係者からは「実質的な支援を求めている企業だけでなく、中小企業であればどんな企業の相談にでものる」という力強いコメントが得られた。 ▲このページのTOPへ |