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このように人間は過去の自分の経験や身近な環境にかなり影響を受ける。先ほどの犯罪の例で考えれば、一度悪いことをすると、もっと悪いことを平気でできるようになり、信じられないほど残虐な罪を犯したりする。またオウム真理教のように外界から閉ざされたカルト集団で異常な行動がエスカレートすることもこれから説明できる。すなわち一見『想定外の出来事』でも人間の特性から見ればすべて『想定内の出来事』なのである。 もちろん自己変調過程は悪いことばかりではない。適切なライバルの存在により、お互いの能力が相乗効果で高まることは読者の皆さんも経験があると思う。その意味で何でも平等というのは一種の悪平等で、ある程度の競争も必要と思われる。 自己変調過程そのものは人間の性質であり、善悪はない。しかしそれをどのように用いるかで人間の幸・不幸が大きく分かれてしまう。それでは私たちの生活を良くするために、どのようにこの法則を用いればよいのであろうか? まず第一に『小さな成功体験を積み重ねること』である。『直近の自分の過去の行動』が成功体験であれば、今現在直面している課題にも成功できるはずと前向きに進むことができる。『前向きに一歩進む』のは『成功の母』である。 第二に『自分のごく身近な環境』をよいものにすることである。仕事場を整理整頓しただけで、新しい気持ちになって仕事が進むことはよくあることである。アイデアが行き詰まったとき、ちょっと公園を散歩するなどのリフレッシュで素晴らしいアイデアが思いつくことも多い。 第三に『素晴らしい友人を持つこと』である。身近な環境で最も影響を受けるのは自分の周りにいる人間である。よい友人は自分を悪い自己変調過程による悪循環を断ち切ってくれる。 最後は『師匠を持つ』ことである。自分の心は時々刻々揺れ動いている。もし北を指す羅針盤がなければ、大海を漂う小船になりかねない。その羅針盤の働きをしてくれるのが師匠である。華道、茶道、柔道、剣道等その分野の道を究めるためには、こんなに情報があふれる時代になってもマニュアルを覚えるだけでは無理である。それには必ず手本となる師匠が必要である。『あの人のように素晴らしい人生を送りたい』と心からお手本にできる『人生の達 人』を師匠に持った人はそれだけでよい方向に自己変調過程が進んでゆくことは間違いない。
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