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再生計画策定の実態
実際の支援スキームは企業ごとに異なるが、経済産業省からは各都道府県に共通の指針が示されており、大まかに分けて次のような手法の組み合わせによるものが多く見られる。
●複数金融機関のリスケジュール(返済期限の延期)
 @DDS(金融機関が保有する貸出金の一部を資本的劣後ローンに変更する手法で、カネボウの不良債権処理でも用いられた)活用による再生計画
 BDES(金融機関が保有する貸出金の一部を、通常種類株と言われる株式に変更する手法で、上場会社の再生では多用された。)活用による再生計画
●中小企業再生ファンドによる債務圧縮
●営業譲渡による再生計画
●私的整理ガイドラインに基づく債権放棄
実際の再生スキームの中では、役員が私財を提供することによって債務の圧縮を図ったり、外部から役員を採用し経営者親族の役員退任が必要になる場合もある。従業員の大幅なリストラや給与カットを行わなければならないこともある。場合によっては金融機関に対して債権放棄を要請してまでも再生を目指すのだから、それなりの痛みを負う覚悟も当然必要になってくる。

中小企業再生支援協議会のイメージと今後の見通し
冒頭のS社の再生計画は、平成17年12月1日付けで100%出資子会社を吸収合併、S社が債権債務を全面的に引き受けることから始まった。さらに、平成16年12月期には約78億円あった有利子負債を、株式等を処分したことにより平成17年12月期には約59億円まで圧縮。そのうちメインバンク2行以外からの借入金約16億円は、所有不動産等の売却により平成18年3月までに一括処理、担保設定を外す手続きを行う予定になっている。残りの約43億円はメインバンク2行の協力のもと、DDSなどの手法を用いて10年間を目処に返済予定である。また、平成18年中には3店舗を閉鎖予定、当面は50店舗体制で営業を継続していく方針で、今期の決算では資産処分により赤字を計上することになるが、経常利益では約1億3000万円ほどの黒字を見込んでおり、引き続き現行の体制での経営再建を目指している。

このように、協議会の支援により再生手続が進んでいる企業であるにもかかわらず、民事再生手続という“法的手続を経た企業再生”のウワサがたってしまったのは、協議会の持つイメージによるものかもしれない。事実、協議会関係者も「中小企業再生支援協議会というカタイ名前にも原因があるのかもしれないが、難しいことをやっているわけではない」と笑う。協議会は企業版の地域総合病院のようなもので、入院が必要な企業の相談内容はもちろんのこと、経営の健康診断といった相談内容にも対応している。さらに、企業再生という根気のいる仕事を行う際の精神的な拠りどころとしても心強い存在だ。健康な人間が人間ドックに入って健診を受けるのと同じように、企業も定期的に経営の健康診断を受けることが、問題点の早期発見、早期解決につながるのではないだろうか。
 最近では日銀による量的緩和政策の早期解除を容認する動きも広まっているが、その結果、今すぐにではないにしろ、近い将来の金利上昇が見込まれる。それにより、金利負担は重くなり体力的に脆弱な企業はさらに経営状態が悪化することになるだろう。地銀や信用金庫などの不良債権処理がますます加速する中で、現状を正確に把握し、経営に必要なもの・不必要なものを見極めた上での新たな飛躍を目指すのならば、中小企業再生支援協議会の扉をたたいてみるのも選択肢の一つである。

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