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経済動向
このページは株式会社東京商工リサーチ様のご協力の下、中国地区の経済動向等を掲載していきます。

企業再生をめぐる水面下の攻防 〜中小企業再生支援協議会の役割とは〜  〜株式会社東京商工リサーチ 岡山支店〜

企業再生といえば多くの人がまず思い浮かべるのが、カネボウやダイエーなどの再生支援事業を手掛けた(株)産業再生機構の存在だろう。産業再生機構では、大手企業を対象に債権の買取なども含めて積極的に事業を展開し、2005年3月には債権の買取期限を満了、さらに当初の予定を1年前倒しして2006年度内に業務を終了する予定であることを発表した。しかし、事業の再建を図ろうとするのは大企業ばかりではない。中小企業の再生支援を中心に手掛けている中小企業再生支援協議会(以下、協議会)の役割と再生支援の流れについて見てみた。

中小企業再生支援協議会とは?
 年が明けて、お正月ムードもだいぶ落ち着いてきたころ一本の電話がかかってきた。「S社が民事再生手続開始を申し立てたというのは本当か?」S社に確認を取ったところ、「そういった事実はない」との回答が得られた。しかし、この話にはまだ続きがある。平成17年12月下旬、S社は再生計画策定のための支援を協議会に要請していた。S社は寿司店や和食店を経営しており、海外にも店舗を展開している老舗の企業である。ところが、平成15年12月期には二期連続赤字を計上するなど経営状態が悪化していたため、平成16年には大幅なリストラを断行、その後も保有資産の処分などを進めていた。今回協議会へ支援を要請したのは、再建スキームにおける「銀行間の調整を円滑に進めるためのもの」だった。

協議会は、産業活力再生特別措置法に基づき経済産業省が都道府県ごとに設置した組織で、経営難に陥っている中小企業の事業を立て直すことを目的としている。東京都の場合は、東京商工会議所が設置主体として平成15年3月18日に立ち上げられており、地域性など中小企業の特性をふまえ、常駐する専門家が中小企業再生の相談にアドバイスや再生計画の策定支援などを行っている。その上で、再生計画を作成する必要がある場合には、弁護士や中小企業診断士、公認会計士、税理士、金融機関などで構成される企業ごとの個別支援チームを組織し再生計画策定を支援する。産業再生機構が債権の買取など、実質再生企業の内部にまで踏み込んで支援を行うのに対し、同協議会では企業の再生支援計画策定にあたって一貫して中立の立場を貫く。協議会は企業再生における調整役であり、サポートはしても決して当事者にはならないということが産業再生機構との最も大きな違いである。

平成15年2月7日、福井県で全国に先駆けて設置され、平成17年11月末日までに扱った相談件数は全国で7866件。そのうち、相談段階で企業の課題が解決した企業は3502社、再生計画策定を支援中の企業は435社、再生計画策定が完了した企業は711社、再生可能性が低く対応が困難な企業は609社、その他の企業が1544社、相談継続中の企業が1065社となっている。全体の約45%の企業は、経営改善や資金繰りの改善についてのアドバイスを受けたり、協議会が金融機関との調整を行い新規運転資金が確保されるなど相談の段階で課題が解決され、約15%の企業が再生計画策定支援の対象となった。
再生計画策定が完了した企業を業種別に見ると、製造業が最も多く、次いで卸売・小売業、飲食店・宿泊業、建設業となっている。また、金融機関からの持込み案件が約3/4と圧倒的に多いのが特徴だ。

協議会の設置理由と不良債権処理の関係
景気回復の兆しが見え始めてきたと言われて久しい。不良債権の処理が加速したここ数年の間に、大手銀行の統廃合が進み日本の金融業界の構図は激変した。最近になってやっと大手メガバンクの不良債権問題が落ち着いてきたと言われるようにもなった。しかし、実際にはメガバンク以外の地方銀行や信用金庫などの不良債権問題はいまだ片付いていないのが現実である。むしろこれから本格化すると言っても過言ではない。
そもそも不良債権処理とは次の二つのことを指していると言われている。@貸し倒れ引当金の計上。貸付金(の一部)が帰ってこない可能性が高い場合、その金額をあらかじめコストとして計上しておくのだ。「帰ってこないお金があることを考慮し厳しく見積もった上で、業務を続けていける体力をつけておくことが大切」というわけだ。A不良債権先企業の経営に大ナタを振るうこと。例えば経営陣を入れ替える、大量解雇・事業所閉鎖を含むリストラをする、会社を完全に清算するということなどが考えられる。銀行は不良債権先企業にとっては大きな債権者であるため、企業の運命に対する発言権を持っている。さらに、その企業の資金源を握っていることから、貸付金を引き上げたり債権を売却したりなどして、前述のような経営に大ナタを振るう動きの引き金を引くこともあり、新しく経営者を送り込んだり再建計画策定に加わったりするなど、プロセスに関わることも多々ある。

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